償却方法が定率法で、期首帳簿価額が入力されているにもかかわらず、算出償却額が計算されない場合の対処方法と、算出償却額の計算方法について説明します。
以下の償却方法に該当する場合だけ、以降をご確認ください。
- 250 %定率法
- 200 %定率法
現象
[資産管理 - 資産登録 - 資産登録]メニューの[償却]ページで、償却方法が 250 %定率法、200 %定率法(以降、「定率法」)の資産に期首帳簿価額が入力されているにもかかわらず、算出償却額が計算されずに 0 円で計上されてしまう。
『固定資産奉行i』の画面
『固定資産奉行V ERP』の画面
原因
「定率改定取得価額」および「改定償却率」を利用して償却額を算出する資産に対して、「定率改定取得価額」が入力されていないことが原因です。
「定率改定取得価額」「改定償却率」を利用して計算するかは、耐用年数欄で判断できます。
定率改定取得価額、改定償却率を利用する計算の場合
耐用年数欄に「[改定償却率]」が表示されます。
期首帳簿価額、(通常の)償却率を利用する計算の場合
耐用年数欄に「[改定償却率]」は表示されず、通常の償却率が表示されます。
対処方法
耐用年数欄に「[改定償却率]」と表示されている場合は、「定率改定取得価額」を入力することで、償却額が計算されます。
参考 | 汎用データを受け入れる場合の受入記号
|
『固定資産奉行i』の画面
『固定資産奉行V ERP』の画面
参考 | 定率改定取得価額とは 通常、定率法は期首帳簿価額 × 償却率(取得初年度は、取得価額 × 償却率)で算出償却額を求めます。ただし、毎期この計算式で償却計算を繰り返しても、償却額が毎期小さくなっていくため、耐用年数経過時点で備忘価額に到達することはありません。 そのため、毎期、調整前償却額(期首帳簿価額 × 償却率)と償却保証額(取得価額 × 保証率)との比較を行い、調整前償却額が償却保証額を下回った事業年度から、その年の期首帳簿価額を均等に償却する計算に切り替わります。この年度の期首帳簿価額のことを「定率改定取得価額」といいます。 |
定率法の算出償却額の計算式
- 償却保証額(注 1) ≦ 調整前償却額(注 2)の場合
算出償却額 = 期首帳簿価額 × 定率法の償却率(当期取得資産の場合は、取得価額 × 定率法の償却率) - 償却保証額 > 調整前償却額の場合
算出償却額 = 定率改定取得価額(注 3)× 改定償却率(注 4)
(注1)償却保証額 = 取得価額 × 保証率(注 5)
(注 2)調整前償却額 = 期首帳簿価額 × 定率法の償却率
(当期取得資産の場合は、取得価額 × 定率法の償却率)
(注 3)償却保証額 > 調整前償却額になった事業年度の期首帳簿価額
(注 4)耐用年数省令別表第九または十の改定償却率
(注 5)耐用年数省令別表第九または十の保証率
計算方法
算出償却額の計算フロー
平成19年 4月 1日以後に取得・供用した定率法資産は毎期以下のフローで償却額が計算されます。
計算詳細
調整前償却額と償却保証額を算出します。
[資産管理 - 資産登録 - 資産登録]メニューの[償却]ページから、[F9:定率詳細]を押して確認します。参考 - 整前償却額 = 期首帳簿価額 × 定率法の償却率
当期取得資産の場合
取得価額 × 定率法の償却率 - 償却保証額 = 取得価額 × 保証率
- 整前償却額 = 期首帳簿価額 × 定率法の償却率
- 調整前償却額と償却保証額を比較します。
以下の図では、償却保証額(65,520)> 調整前償却額(52,428)となり、
「定率改定取得価額(262,144)」を利用した計算が行われます。 - 比較した結果をもとに算出償却額を決定します。
- 償却保証額 ≦ 調整前償却額の場合
算出償却額 = 期首帳簿価額 × 定率法の償 却率
当期取得資産の場合
取得価額 × 定率法の償却率 (期中に取得した資産の場合、使用月数を加味) - 償却保証額 > 調整前償却額の場合
調整前償却額が償却保証額を下回った年の期首帳簿価額を「定率改定取得価額」として、以下の計算を行います。
算出償却額 = 定率改定取得価額 × 改定償却
- 償却保証額 ≦ 調整前償却額の場合
計算例
200 %定率法による償却額の計算例を記載します。
取得価額 | 1,000,000 円 |
---|---|
耐用年数 | 10年 |
償却方法 | 200 %定率法 |
償却率 | 0.200 |
保証率 | 0.06552 |
改定償却率 | 0.250 |
上記の資産の場合、1年目から10年目までの償却額の計算は以下のとおりです。
年数 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 7年目 | 8年目 | 9年目 | 10年目 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
期首 帳簿価額 | 1,000,000 | 800,000 | 640,000 | 512,000 | 409,600 | 327,680 | 262,144 | 196,608 | 131,072 | 65,536 |
調整前 償却額 | 200,000 | 160,000 | 128,000 | 102,400 | 81,920 | 65,536 | 52,428 | |||
償却 保証額 | 65,520 | 65,520 | 65,520 | 65,520 | 65,520 | 65,520 | 65,520 | |||
改定 取得価額 × 改定 償却率 | - | - | - | - | - | - | 65,536 | 65,536 | 65,536 | 65,536 |
算出 償却額 | 200,000 | 160,000 | 128,000 | 102,400 | 81,920 | 65,536 | 65,536 | 65,536 | 65,536 | 65,535 |
期末 帳簿価額 | 800,000 | 640,000 | 512,000 | 409,600 | 327,680 | 262,144 | 196,608 | 131,072 | 65,536 | 1 |
1年目 ~ 6年目
調整前償却額と償却保証額を算出します。
例 1年目
- 調整前償却額:200,000
- 償却保証額:65,520
- 償却保証額と調整前償却額を比較します。
償却保証額(65,520)≦ 調整前償却額(200,000)です。 - 比較した結果をもとに算出償却額を決定します。
算出償却額 = 期首帳簿価額 × 定率法の償却率
当期取得資産の場合
取得価額 × 定率法の償却率 (期中で取得した資産の場合、使用月数を加味)
7年目 ~ 10年目
7年目に償却保証額(65,520)> 調整前償却額(52,428)となります。
償却保証額 > 調整前償却額となった年の期首帳簿価額が「改定取得価額」となります。
7年目以降は、改定取得価額に改定償却率を乗じた金額が算出償却額となります。
算出償却額 = 定率改定取得価額 × 改定償却率
65,536 = 262,144 × 0.250
(10年目の算出償却額は備忘価額 1 円を残すため、65,535 円が計上されます。)